*目める*










そして僕は死んだ...










右を向くと遠くに、光溢れる出口があった。
左を向くと遠くに、飲み込まれるような闇色の出口があった。
でもどちらを向いても、そこへ行く道がない...

―僕の行くべきところはどちらでもない...




目を凝らして見ると、遠く正面には門のようなモノが見える。
そして向こうへ伸びる道が...

―見つけたっ!  










何時まで続くかしれない道。
なかなか正面に見えている門に近づいた気がしない...
乳白色の霧のようなモノの中、暑さも寒さも感じないけれど、平坦な道を歩くだけなのに自分が酷く消耗しているのが分かる。
やっぱり、道なくともあの二つの出口どちらかへ行くべきだったのか...

いや...

僕はあの二つの出口を見ても何も思わなかった...
けど、この道の先に見えるあの“門”を見つけた時...

・・・衝動を覚えた。


「おっ!いたいた・・・ライトー!」


「・・・えっ?・・・リューク!?」


前からやってきたのは、ちょっと前までいつも僕の側にいた大事な相棒だった。
考えが正しいなら別れてから少ししかたってないけれど、その奇怪な姿に懐かしさを憶えた。


「僕を迎えにでも来たのか?」


思わず、僕より一回りも二回りも大きいその体を抱きしめた。
リュークは驚いたようだけど、彼はクシャッと頭を撫でてくれる。
デスノートの使用者とそれを傍観する死神、というだけの関係だったはずだけれど。
彼もそれなりには、僕というノートの仮所有者―本当の所有者はリュークだしね―に愛着を持ってくれていたのだろうか...
こういう言い方は恥ずかしいけれど、僕は何だか酷く安心してしまった。


「ああ。デスノートを使ったヤツを迎えに行くのは、デスノートの所有者である死神の権利ってゆーか、義務ってゆーかな?」


「ふ〜ん。やっぱり、僕は死んだんだね...」


「そうだ」


ただの事実の確認。
そこに恐怖も未練もない...
勘違いしたようで、リュークは心配したようにこっちを覗き込んでくるけど。

違うよ。リューク、僕は後悔なんかしてないんだ。

とても有意義で満足して死ぬ事が出来たんだ...
最後は、・・・お前が僕を殺してくれたしね。


「随分早く見つかったモンだ!・・・というか、良くコッチに来たな?」


「ああ...、あの“門”へ繋がる道が見えたからな。」


そう言って、僕は向こうに見える“門”を指差した。
リュークはそれを見て、あきらかに驚いた顔をする。
僕は問うようにリュークの顔を見ると、彼は教えてくれた。
ここは人が死んだ後行き着く場所で...
普通、“門”へ行く道どころか“門”さえも見えないらしい。
その代わり、普通の人間と同じようにあの二つの出口は見えているけれど、ノートを使った者は見えているだけでそのどちらへも行けない。
行けもしないのにどっちかへ行こうとして焦ってるところを死神たちが親切にとっ捕まえて―これはリュークの弁―、あの“門”の向こうへ送るんだそうだ。


「なるほど...。さすがはライトだな...。無意識にも自覚が早いということだ」


「どういうことだ?」


「クククク・・・。何となく分かってるんじゃないのか?」


口先では笑っているようだけど、とても生真面目な表情をした彼がこちらを見てくる。
僕は覚悟をして頷いた。


「僕は、デスノートの使用者は、死んだ後天国にも地獄にも行けない。」


リュークの言ったことを思い出す。


「僕は、・・・死神になるんだね?」


正解、とでも言うようにリュークは唇をニッと吊り上げた。
そして促すように、トンッと僕の背を押した。
僕はそれに応えて歩き出す。




ふと、リュークが振り返って僕を見た。

気づいて横を見ると、リュークは僕に手を差し出していた。
僕はそれに思わず吹き出して、そして、・・・頷いた。
差し出された手に触れると、僕の片手は余りにもやさしくそっと包み込むように握られた。

こんなこと生きていたころはしなかった。

・・・お互い戸惑っていることをお互いの手を通して気づく。
そして、リュークが僕の手を引いて歩き出す。

やはり、僕はこんな所に一人で心細かったのかもしれない。

何も感じないはずのこの空間の中、リュークの手の暖かさにホッとした。










“門”の前までやってきた僕は、前を歩いていたリュークのその大きな手をグイッと引っ張った。


「なんだ?」


僕の背より2倍くらいの高さはあるだろうが...、それでも意外とこじんまりとした“門”を開けようとしていたリュークがこちらを向く。


「大丈夫か、ライト...」


僕は少し躊躇って、首を縦に振った。
リュークは何か考えるように首を少しかしげて、僕の手を握っている方とは反対の手を動かした。

トントン

彼の手は撫でるように、僕の頭をやさしく叩いていた。

僕は笑ってリュークを見上げた。


「行こう!」


そして僕が門に手をかざすと、それに反応したかのように“門”が開きだす。




今度は、お互いの手はギュッと握られていた。










ライトとリューク。ちょっとリュ月風味? それともパパ=リューク、子=ライト? ライトが弱い... 
15/04/05 up